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2010年1月22日 (金)

『言伝(ことづて)』前編

こんばんは、花田光です。

 人は「向こう側」に旅立つ時…、
『何を思う』のでしょう?
あの世に到達するまでの間の、
時間的な感覚はどんなでしょうか?

ゆったりと余裕があるのでしょうか?
  それともあっと云う間なのでしょうか?
 亡くなり方によるかもしれませんし、
他界する年齢、それぞれ思い残した物事などの違いにもよるでしょうか?
 その人の性格、気質による差も、何だか大きそうな気がします。

 でも、どうもそれぞれ、挨拶すべき人に会いに行ったり、
とにかく、なるべく『思い残すこと』のないように、
何らかのアクションを起こす人が
少なからずいるようです。

 今夜のお話に登場する「あちら側への旅行者」の方、
随分と「きちんとされた方」だと、見受けられます。
 慌てる風でなく、また言葉を発するでもなく、
実にシンプルに静かに、
自分が来たことを「受信可能な人物」に伝え、
そして彼に、肝心の『メッセージ』を『ことづて』してもらう。
自らの思いを託します。
そういうお話です・・・・・・。

 私の古い友人の体験です。
 彼に初めての子供が生まれた年のことでした。
 1990年代のある秋の夜。
 生後何ヶ月かした赤ん坊が、となりの畳の部屋に眠っております。
ベビーサークルの中、小さなマットの上です。
 ……………………………………。

 深夜2時頃、彼は空気清浄機(※↓文末訳注参照)の運転音で目を覚まします。
壁に掛けてあるその機械のセンサーが働いて、
「ゴォーーーーーーーッ!」と
いきなり高速回転をはじめたのです。
煙や、何か匂いの気配がないのにも関わらずです。

 ほどなくして、空気清浄機はピタリと止まります。

 それがかえって夜の静寂を際立たせました。

 何やら人の気配がします…。

 もちろん彼と妻、赤ん坊以外の気配です。

 薄闇の中、となりの部屋から

  別の音が聞こえて参ります。
 

 しゅっ … しゅっ …。

 昔聞いたことのある音です。

 それは 足袋の音でした。
 
 足袋が畳の上を擦れる音です。

 そう、内股気味に上品に

 着物の女性が 歩く音です。 
 

 しゅっ … しゅっ …。 

 静かです。 

 彼は続き部屋になっている隣室に目を凝らしますが
人影は見えません。

 目を閉じて耳を澄まします。

 しゅっ … しゅっ …。

 足音の主はどうやらベビーサークルの周りを回っています。

 赤ん坊を起こさぬよう…、
寝顔をそっと 覗きながら。

 歳の頃70を少し越えたくらいの御婦人。
紋付の羽織を着てきりっと正装した御婦人の姿が脳裏に浮かびました。
 微笑みつつ赤ん坊を見るのを はっきりと感じたのです。
 御婦人の霊は、初対面の彼らに気配りをされたのでありましょう。
髪を丁寧に結い、訪問着です。

 彼は不思議に思います。
「会ったことのない人だっ。」

 それまで彼は自分の身内以外の霊を感じたことがなく、
その夜初めて感得したそれは実に新鮮だったと、
何やら興奮気味にわたくしに語ったのをよく憶えています。

「いやね?正装していらしているのがわかるんだよ。驚きだよ。」

 ゆっくり見て行って下さいと、彼は心で目礼し(←変な表現ですが、そうなのだそうです。)

その夜はそのまま眠りに就きました。

・・・・・・・・・前編、ここまでです。続きはまた来週。

(※↑訳注『空気清浄機』)

ーーーーーー《当時愛煙家だった彼は、
自宅で煙草を吸う時は、
持ち運び可能な空気清浄機
(換気扇を一回り大きくしたサイズの
分厚いフィルターの付いたけっこうゴツイ機械。
敏感な煙センサー付き)
を、テーブルに置き、高速回転させ
空気吸い込み面に口を寄せ、煙を吐いていました。
それをやるならベランダかどっか外で吸えよ、って感じですがね?
そしてその機械、眠る時には壁に掛けられるような仕様になっていたので、
汚れセンサーのスイッチを入れて、
壁に掛けてから毎晩眠りに就いていたのだそうです。
わたくしは実際にその空気清浄機を見せてもらいました。
松下電工(当時)のしっかりした作りの
空気の汚れにはかなり敏感なものに見受けられました。
2cm近い幅のフィルターの奥に大きなプロペラが付いた単純構造です。
プロペラが大きそうな、ほとんど可動式換気扇みたいな感じだった気がします。
あれが夜中に高速回転したら確かに目が覚めますね。 

彼曰く、清浄機が深夜に自動運転することはまず滅多に無く、
その夜の一件以前に、一度だけあったのだそうです。
煙の気配が無いのに深夜高速運転をはじめた時、彼は心で質問しました。
「誰ですか?」と。

そうしたら機械音が一気に小さくなり、少し驚いた彼は、
心で1人ずつ名前を挙げて質問していきます。
すると、彼の母方の曾祖母の名を思い浮かべた瞬間
回転音が少し大きくなり、やがて止まったそうです。
彼が生まれた時にはもう他界していた人です。
彼は、「ヘええっ!」とかしこまり、
赤ん坊を見に来てくれたことに感謝したと云います。
そして、その曾祖母が煙草が大層好きだった
という話を後日思い出し、納得したのだとか。》ーーーーー

 またまた長くなってしまいました。

 おつきあい誠にありがとうございます。

 おやすみなさいませ。

 どうか今夜も好い夢が見れますように・・・。

     2010年  1月22日

          花田光こと伯林青 拝 

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■みちり様
コメント欄へのご連絡誠にありがとうございました。
花田に申し伝えます。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

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コメント

花田さん、こんばんは!

今の世に、魂だけが残っている方達のお話は、切なく悲しい物語が取り上げられる事が多いですね。

その様な中、この様に、ほっこり出来るお話もあるのですね。

何故か怖いもののようにとらえがちな魂ですが、大切な何かを、大切な人へ伝えようとする、強い気持ちの表れで、必ずしも怖いものではないのですね。

とは言いながらも、実際に体験するような事があったら…
自分のリアクション、想像できません。

花田さんのご友人のように、メッセージを理解して伝えることが出来る、器の大きな人だけが体験する事なのでしょうか?

今回も心温まるお話、ありがとうございました。

次回も楽しみにしております。

それでは、花田さんにとりまして、素敵な一日となりますように…

投稿: 理恵 | 2010年2月 1日 (月) 00時34分

なるほど今夜は満月ですか。

どうりでうまく眠れない。
カラスもなんだか騒がしい。
酔いがはやいと相方は言う。

満月の下で、
おもいだす思い出はありますか。

おやすみなさい。
また明日。

投稿: sanagi | 2010年1月30日 (土) 01時55分

サリンジャー氏が亡くなったようです。

懐かしい響きですね、サリンジャー

青春の思い出です。

投稿: NecoNeco | 2010年1月29日 (金) 08時39分

こんばんは、花田さん、管理の方。
なんだかすごいお話ですね。
私は一回もそういう「会っちゃう」体験をしたことがないので、花田さんのご友人の落ち着きっぷりに驚きです。
その方には「会っちゃう」ことは普通なんでしょうか…なんか不思議です。
あと、空気清浄機の前で煙を吐くってのがちょっと微笑ましいですね。
後編、楽しみに待っています。

投稿: みちり | 2010年1月25日 (月) 18時36分

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