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2010年3月 1日 (月)

『生まれ、他界した全ての俳優志望者たちへのオマージュ…②』

 自動記述で思い出しました。
大昔のパンクな若者、アンドレ・ブルトンとポール・エリュアール共著の、
実にふざけた詩集『処女懐胎』の中の翻訳の一行を。

・・・『君がそそられた気狂い沙汰にのっとって話せ』・・・           

   (↑出典「処女懐胎」ブルトンーーエリュアール 
    服部伸六・訳 思潮社 この①文末に注釈有り↓) 

 では、『わたくしがそそられた 「それ」にのっとって話しましょう。』・・・

 花田が‥‥20代前半で、
ある劇団附属の演劇研究所に奇跡的に受かった頃・・・。

(養成所ではありません。劇団とは無関係です。
しかし当時そこに受かった者の多くが、
あたかも芸能界の登竜門を潜ったかのような錯覚すら覚えたものです。)

・・・・・・そうでした。
身の程知らずで、自分は銀幕のスターになれると、
本気で勘違いしていた頃です。
故・岸田森のように、
主役は張れなくても、
変態系バイプレイヤーで必ず日の目を見るだろうと確信していた頃です。
いや、自分が岸田森どまりのはずがない。
和製ピーター・オトゥール・・・・
(←どこかいけない匂いのするスター。
「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥ―ルを
リバイバル上映で観たわたくしは、己と同化したのです。

椎名林檎の歌詞に、昔自分のことをジャニス・イアンだと思っていた、
というのがありますが、まさにあれです。
若き日の思い込みとはそんなものです。)

・・・・として、
日本映画界に君臨する日が必ず来る!
この世で自分の芝居が、最も美しい。
単に上手いのではなく『美しい!』ということが重要でした。
『この世で自分が最も美しい芝居をする役者』だと、
本気で信じていた頃・・・・・・・・・・・・・・・。(笑笑笑)
そこの演劇研究生、昼間部・夜間部合わせて60名のうちで‥‥
たったひとり、たったひとりだけが、
早々に本当に夢を叶えました。
歴代、スターを生み続ける人気テレビシリーズに、
その男は新人刑事役でデビューを果たしたのです。

 実に衝撃でした。
実際、当時その番組には、次々とその劇団の研究生の先輩方が出演し、
役の上で殉職し、卒業。スターとなっていたのでした。

 わたくしは・・・、
だから衝撃を受けたのではありません。

 その演劇研究所を受ける青年達の7割方が、
実は新劇なんぞを学びたかったわけではさらさらなく、
アクションスターになりたかったという事実を、
合格してから知ったわたくしですが・・・・・・、

(そもそも他の新劇の養成所を受けるつもりだったわたくしが、
「あなたは地味だからそこを受けなさい」と、
「あとあと何かと得だから是非受験するように!」と、
偶然に知り合った、親切な人物に強く勧められ、
受け、マグレでたまたま合格したのでした。
予想とのギャップに内心苦笑していました。)

・・・・・皆の勘違いな夢を実現した『彼』が、
羨ましかったわけではないのです。

わたくしは同期の、
背が高く脚も長い、ハンサムな青年達とは明らかに異質で、
限りなく地味な存在でした。

(当時花田にその自覚はありません。だって俳優志望の者らはですね?
どんな不細工でも不美人でも、自分には、特別の美しさがあると、
信じているものです。そして真に「美しい者」「華のある者」を知るにつれ、
徐々に、否応なく自覚していくのです。)

 その人気刑事ドラマにわたくしは毛ほどの魅力も感じていませんでした。

(当時の若者達が憧れていた「某スーパースター」を、
花田は単なる『野放図な大根役者』としか感じていませんでしたしね。
その刑事ドラマ出身で最も大成し、
ずっと後年ハリウッド映画にも出演し他界したあの乱暴な人になりたいと、
本気で思っていた連中・・・・・・。
その演劇研究所を受けて受かった、「云わばスーパースターのそっくりさんたち」は、
半ば本気で、
そこに受かれば銃の撃ち方でも教えてくれる
とでも思っているフシがありました。
彼らはアーミーグリーンの「MA1」とかいうジャンパー?を、
何故だか必ず「真っ白い洗いざらしのTシャツ」の上に羽織り、
リーヴァイスのジーンズに黒のブーツ、もじゃもじゃ頭に
必ずレイバンのサングラスなのです。
とても新劇の養成所とは思えない光景ですが、事実でした。
それはそれで・・・実に微笑ましかったのですが・・・。
そしてそれが唯一「さまになっていた」のが『彼』だったわけです。)

 にもかかわらず‥‥‥、にもかかわらずです。!!!
わたくしは・・・・・・・・ですね、
『彼のデビュー』に、不覚にも、衝撃を受けたのです。

 噂で持ちきりだった、彼がお茶の間に初登場する日、
夜8時、わたくしも観ました・・・。
その刑事ドラマ内で、彼が走るシーンを。

 わたくし、あれを、生涯忘れることはありません。
その日観たブラウン管の中の彼は、
『何かとてつもないもの』『かけがえのないもの』を
発していました。
それは・・・・、
単なる華とか、迫力とか、そんな安易な言葉で片付けようのない、
原因不明に『畏れ多い』、
徹頭徹尾に『絶対的』な・・・
何かでした。
彼がデビューできた秘密を、
ある意味彼の人生の全てを、
走る姿に、
わたくしは一瞬にして見て取ったのです。

あれはただのデビューなんかじゃない。
その昔、『燃えよドラゴン』を観た少年が、
「ハリウッドのフィルムスターにはなれないが、
ブルース・リーにはなれる気がし」て、
とりあえず身体を鍛えてみたよな、
おままごとな夢とはまったく無縁な、
呪いにも似た・・・、何か・・・彼の人生そのものを、
走る姿に見た気がしたのです。
・・・・・・そう、ブルース・リーも、
彼の神さまであるモジャモジャ頭のあのスーパースターも、
何か・・常に
『怒り』を抱えているように見えた。
どうして彼らが怒っているのか、
ほとんどの若者たちにはどうでもよかったはずです。
 
 しかし・・・・・『彼』はその意味を、
その怒りの本質を、本能的に、直観的に、キャッチして、
おそらくはビリビリ感電したに相違ないのです。

 本当に『共振した者の迫力』というか、
『資格』というか、
たぶん、『宿命』……。

 彼には、おそらく誰もが持ち得ない、そうした怒り、
『彼自身すら、ひょっとして自覚しなかったかもしれない
何か特別製の、魂から発する怒り』・・・・・が、
内部にふつふつと煮えたぎっている、のが、
わたくしには何故か見えた。
 なんとも、『崇高』、だったんです。
 涙が出そうになりました。
いえ、充分頬を伝った。
 彼は、彼自身が憧れた大スターの何層倍も美しく、
画面の中を疾駆していました。

 わたくしにはそう見えた。
まるで音楽のようでした。
そう、そこには、花田の理想の『美しさ』が、確かにあったのです・・・・。

 (わたくし自身、己という俳優は「それ」を
『肉体ではなく表現する者』だと、信じていました。
わたくしの神様ピーター・オトゥールは、
『肉体派の対極』に位置していました。
哲学的、変態的、『悩める精神』そのもののような容貌。
痩せこけて病的な、しかし二枚目俳優。
そしてやはり、どこか『怒れる俳優』。
それがわたくしのオトゥールなのでした。
 
                  ・
 この話の主人公『彼』の『怒れる肉体の躍動』は、
わたくしの中で、オトゥールの芝居の狂気と
美事にシンクロしたのでした。

 オトゥールは、今でも花田の神様です。
もちろンオトゥールが若き日、
「手に負えないむちゃくちゃな神さま」であったことを含めてです。
そしてやはり、自分は若い時のオトゥ-ルが好きです。
しかも『エキセントリックな芝居を「封じられた」オトゥール』が大好きです。
若いくせに年寄りが上手かった!
花田にとって結果的にオトゥ―ルのベストプレイは
意外にも『ラマンチャの男』や『アラビアのロレンス』ではなく、
『チップス先生さようなら』なんですねえ何故か。
野放図な天才はやはり縛るにこしたことはないってことなのでしょうか?
何年か前の久々の主演映画、
ドスケベな老優が海辺で息絶える『ヴィーナス』も、
もちろんチェックしています。)

        ☆☆☆☆☆☆
       ②ここまで・・・・≪続く≫

≪↑注釈…『処女懐胎』花田が20代の頃出会った詩集。
もっとも、最後の10数ページの「原判決」、のみに
痺れたのでした。この野放図な感じは、当時のわたくしには素敵でした。
以下当時痙攣した箇所いくつか抜粋・・・・・・・

【本を読むな。本のなかの数行にある言葉を引きはなしている空間が描く白い紙面をみつめて、それから霊感を得よ。
他人に手をにぎらせておけ。
理性の年ごろ捨てた武具をまたつけろ。
きちんと整理をしておいて、道路上の小石をかき乱せ。
忘れてしまった夢にきみの知らない価値を与えよ。
空き家に住め。空き家はきみのほかに住み手がないのだ。
もしきみの戸をノックするものがおれば、きみの最後の意志をかいて鍵をそえろ。
水をのむべからず。
きみがそそられた気狂い沙汰にのっとって話せ。
きらめく色の服を着よ、風変わりだからな。
腕をのばしている間だけのことだ、きみの見るものが君のものであるのは。
判事の白テンの毛皮を噛みながら嘘をつけ。
きみはきみの人生の園丁だぞ。
                   ・・・・・・
首をくくりたまえ、クリヨン君、奴らは奴らの出たとこ勝負できみを頼りにするだろう。
食べるものを売りはらい、何か飢え死にするものを買え。
新しい敷石に石をはめ込む職人となるがいい。
きみの掌のうちを見たがる男には、天空にまだ発見されない惑星をしめすことだ。
爪先き立って出入りする楽しみを与えてくれろ。
ポアン・ヴィルギュ-ル、みろ、句読点にでさえ、何と驚くべきものがあるじゃないか。
埃のなかにきみの倦怠のたわむれをえがけ。
またやり始めるというような無駄なことはやめろ。
とちの実とはちがい、きみの頭はまだ落ちてしまってはいないのだから頭の重みは絶対にないのだと主張せよ。
眉をしかめずに燕が考えそうな思想を考えろ。
砂の上に亡びることのない文字を書け。
親たちを矯正しろ。
良識を傷つけないようなものをもってはならぬ。
きみがかいたほんものの恋文は冒?(冒涜)のいけにえで封印しておけ。
純粋なものは処罰せよ、純粋さはきみの場合処罰されるのだ。
この世の中で一番小さく一番心もとない本が慾しいというのか?きみの恋文のスタンプを製本して泣くことだ、とにかくそうすれば何かうるところがある。
期待は抱くな。
涙がでるぐらいまでぼくを笑わせるきみの自由という奴がきみの自由なのだ。
好きなだけ木を伐り、好きなだけ石をくだくがいい、がしかしだ、有用性という蒼白い光には気をつけるんだぞ。
  hito 
あの女が落とした扇子をひろえ、どうしたらいいかわからなくても構わぬから。
(『処女懐胎』ブルトンーーエリュアール服部伸六訳・思潮社より)】

↑上記詩集は、わたくしが若い日に整形外科に」入院した折、
自称、猛サディストのデザイン関係の変態氏から薦められたものでした。≫

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